「みんなー、切れたわよー!」
ある1人の女子がテントはりの男の人達に言う。
1時間くらいかな。
ここのサークルは女子が多いから野菜を切るのも直ぐに終わってしまった。
焼くのは個人で...。
いわゆるセルフサービスだ。
「あっ、星花~一緒に食べよー?」
うん、もちろん大歓迎。
春くんと先輩も一緒に...と付け加えていった。
きららは春のことを"春くん"と呼んでいる。
「うん、みんなで食べよっか!」
私達はそれぞれ好きな人を呼ぶ。
「春ー!」
呼んでみたが返事はない。
私は辺りをよく見回した。
「いない・・・どこだろ?」
春の姿が見当たらない。
「ねぇ、春見なかった??」
私は近くにいた男子に話しかけてみた。
知ってたらいいんだけど・・・。
「うぉ...有村かよ。で、春?・・あぁ、アイツか。アイツなら散歩するってドカ行ったぜ?」
なんで私が話したら嫌な顔をするのよっ?
もうっ、確かに不細工だけど・・・。
それに今の私は変装中=地味子
まぁ、そうなるよね、うん。
そう言えば春は私と会った時、なんも嫌な顔をしなかった。
春は外見だけでは見ない。
ちゃんと内面までみて好き嫌いなどを決める。
人を平等に見てるのかな...?
やっぱり春は・・・。
「散歩ね。ありがとう。」
私と話すこと自体が嫌かもだけど、お礼は言わなくちゃっ。
散歩かぁ...、この辺だよね、多分。
一応きららに春を探しに行くと行って探しに行った。
これも"春探し"
懐かしい。昔はずっと"春探し"をしてたなあ。
結局見つからなくて、奇跡的に会う形になったけど。
「春どこ...」
もう居ない。どこ行ったんだろう。
うん?なんか声が聞こえる...?気がする。
私は気配を消し物音を立てずに近寄ってみた。
『・・・きらきら・・ひかるお空の星よ~』
春だ!やっと見つけた。
それよりこの歌懐かしいなぁ。
私達が昔よく歌ってた"きらきら星"だ。
春の声。春の歌。やっぱり好きだなぁ。
私は少しの間、聞いておくことにした。
春side
俺の日常は"あの日"から急激に変わり始めた。
あの日とは花と離れることを決めた日。
花と会わなくなった日。
俺はこの一年半がとても殺風景になった。
星を見ている時、俺の中で星が色を失ったようになった。
その時、思ったんだ。
これは花と見ていたから綺麗な星が見れていたんだ。って。
俺の中で花がいることは当たり前になっていたんだ。
たとえ昔みたいに手を繋いだり、キスをしたりしなくても。
あの高校に転校して、花と話すことだけでも幸せだった。
でも、俺はその"幸せ"をこの手で手放したんだ。
いや、手放すしか俺の心は許さなかった。
俺自身がっ・・・。
「ねぇ、この後遊ばな~い?」
普通に街を歩いてた。
そしたら2人の女が俺に声をかけてきた。
「失せろっ・・・」
近づくな...。
香水くさい。笑顔も胡散臭い。
花はもっといい匂いで笑顔が可愛かったな...。
花はっ・・・。
「いいじゃな~い。」
懲りないな、この女ども。
「俺はお前らと遊ぶつもりは無い。これで最後だ。・・・俺の前から消えろ。」
少し殺気を出す。
「わ、わ、分かったわよ。行こっ?」
慌てて女どもは走ってどこかへと行った。
俺にとって花はかけがえのない存在だったと改めて気づく。
もう会うつもりはないがな。
俺はもう花を傷つけない。
今夜も星を見る。
「また、色なしか・・・。」
でも、俺は星を見る。見続ける。
だって花も同じ星を見てる気がするから。
花も星が好きだし、よく見てそうだな。
寝る前とか...。
好きな人と同じ星を見れるって最高だと思わないか?
まぁ、俺の場合は色なしだけど。
そして、星を見ている時に必ずしていること。
"花が幸せでありますように"
"花が笑顔でいますように"
すべて花に関しての願い事。
俺自身のはしたことが無い。
だから・・・
"花に俺の罪を許して貰えますように"
"また一緒に居られますよに"
そんなことは願わない。いや、願えないのか。
俺の心は花という光を失ってしまった。
手放してしまった。
でも、これでいい。
俺は一生暗闇の中でいい。
でも俺は気づいていた自分の本心に。
"また光を心に宿したい"
気づいていたんだ。