「おーい」
聞き覚えのある声に美冬ははっとした。慌てて彼女はドアに駆け寄る。ドアには鍵はかかっていなかったが普段誰かが開けることはなかった。美冬自身も外に出ることはない。
「誰?」
答えはわかっていたがあえてたずねる。その声を確かめたかった。
「えっ、美冬?」
ガタガタと震える窓の音に彼の声が重なる。うまく聞き取れずにいたが美冬はうなずいた。
秋人。
思わず呼び慣れた名が出る。アメリカ人の父と日本人の母との間に生まれた彼はミセス・アキヒト・グリーンという本名があった。だが美冬はいつも「秋人」と日本の名で呼んでいた。
彼女はドアに触れる。それまでしっかりと閉じられていたドアが嘘のように簡単に開いた。びゅうと吹きすさぶ雪とともにコートを羽織った幼馴染みが飛び込んでくる。ドアは勝手に閉じた。誰の手も介さずドア自身が意思を持っているかのようでもある。彼以外を拒絶しているふうでもあった。
聞き覚えのある声に美冬ははっとした。慌てて彼女はドアに駆け寄る。ドアには鍵はかかっていなかったが普段誰かが開けることはなかった。美冬自身も外に出ることはない。
「誰?」
答えはわかっていたがあえてたずねる。その声を確かめたかった。
「えっ、美冬?」
ガタガタと震える窓の音に彼の声が重なる。うまく聞き取れずにいたが美冬はうなずいた。
秋人。
思わず呼び慣れた名が出る。アメリカ人の父と日本人の母との間に生まれた彼はミセス・アキヒト・グリーンという本名があった。だが美冬はいつも「秋人」と日本の名で呼んでいた。
彼女はドアに触れる。それまでしっかりと閉じられていたドアが嘘のように簡単に開いた。びゅうと吹きすさぶ雪とともにコートを羽織った幼馴染みが飛び込んでくる。ドアは勝手に閉じた。誰の手も介さずドア自身が意思を持っているかのようでもある。彼以外を拒絶しているふうでもあった。