かつては店内にカントリーミュージックが流れていたものだが今は風の音がBGM代わりだった。
 照明の仄白い明かりが店の天井に灯っている。美冬はいつものように暇な時間をぼんやりと過ごしていた。

 *

 びゅうと風が吹き、ガタガタと窓を揺らす。
 朝方から降り続けていた雪は夕方になってからその勢いを強め、今では吹雪と化していた。降り積もる雪はすでに大人の腰ほどの高さにまで達している。
 伝染や電話線などのケーブル類は積雪の重みでたるんだり切れたりしてしまうので全て地下に通すようになっていた。それ故にこのあたりには電柱はない。道を照らすのはときおり通る除雪車のヘッドライトかその後に走る車のそれくらいだ。治安を思うとどうかというレベルだがとにかくこの高台へと続く道には明かりらしい明かりはなかった。
 どん、と大きな音が鳴り美冬はびくりとする。反射的に向いた視線の先には大きなカウベルのついたドアがあった。分厚いドアの向こうから誰かが叩いているらしくまたドアが強く響く。