お店を出ると夜風が涼しいなんてもんじゃなかった。

「さっむ!」
「だから言ったろ。これから冷えると」

 そろそろ、お別れの時間かな。
 もっと一緒にいたすぎて泣きそう。

 帰りたくない、なんて子供っぽいことをそう何度も言えないし。

 今日ほど自分が高校生だということを呪ったことはない。

「美香」

 名前を呼ばれただけなのに、心臓が大きく跳ねる。

「お前を連れていきたい場所がある」

 嘘みたい。
 大地くんの方から誘ってくれるなんて。
 いつ?
 ううん、いつだっていい。
 大地くんと会えるなら、あたしはどんな予定だってキャンセルするだろう。

「ただ。そこに行ったら今夜は帰してやれないが」

 え……と。んん?

「それでもいいか」

 今夜!? これから?
 むしろ、あたし、帰らなくていいの?

「いいよ」

 あたしには帰りを待っていてくれる人なんていない。

「一人ですごす夜は。……すごく退屈」

 なにより大地くんと離れたくなくなってる。

「だったら来い」

 予想外の誘いに、心臓がバクバク。

「いいか。ここでお前のこと、きちんと帰すのが。まともな大人だ」
「……まともじゃなくていいもん」

 このまま夜が明けなければ、いいのに。