「また今度な」
「じゃあ。キスしてよ」

 してえよ、俺だって。

「大切にされる意味が、わかんない」
「なんだそれ」

 大切にしない意味がわかんねえだろ?

「ショジョでもないのに」

 ……ったくお前は。

「泣きそうな顔すんな」

 こっちを振り返った美香の、大きな目に涙がたまっている。

「初めては、全部。大地くんにあげたかった」

 この世の終わりみたいな顔しやがって。

「これからどれだけ人生長いと思ってる。初めてなんて、まだまだあんだろ。たくさん奪ってやるから覚悟しとけ」
「大好き」
「俺だって美香が好きだ。大事にさせてくれるな?」

 だから、泣いたりするな。

「うぇ……っ」
「おい。泣くなって」
「大地くんが。やっと。すきって、言ってくれたぁ」

 ずっと、思ってきた。

 口に出せないときも、何度も何度も心の中で唱えた。

「焦らなくていい」
「焦ってるんじゃないよ。欲しいだけ」