ふっ、と笑うマキノの柔らかい笑顔は、なんだか別人みたい。
 ……ちょっと色気あるかも。
 よく見ると整ったカオしてるし。

「こんな場所で男と二人になって。お前の彼氏なんにも言わねーのか」
「だからー、彼氏じゃないし」
「自分が食う予定の手料理、他の男が食ってるなんて知ったら。どう思うかね」
「マキノは。ただの担任でしょ」

 ヒドいこと言っちゃったお詫びもかねてるわけで。

「ここに置いてくね。食べれそうなら他のも食べて――」
「ああ、ただの担任だ。担任も。男だ」

 いつも前屈みだから、知らなかった。

「ちょ……」

 マキノは案外背が高い。
 というよりは、あたしが小さいんだ。
 学校ではヒールが履けないから。

「や、」
「怖いか」

 壁に押さえつけられ、手首を捕まれる。

「ふざけないで」
「抵抗できないだろ」