「愛してるんだね」
「なんにもしてやれてねーよ」
「待ってるんじゃないですか。また一緒に暮らせるの」
「ああ。待ってる」
「これ」

 マキノの、だらしなくはだけたシャツからのぞくチェーンを引っ張る。
 その先にシルバーリングがついていた。

「指輪だったんだ?」
「触んなや」
「どうして指にしないの」
「こういうのは苦手でな」

 だけど。肌身離さず、持ち歩いてるね。

「ちゃんと自分のこと大事にしなよ。奥さん帰ってきたときに、ビックリしちゃう。浦島太郎かと」
「ンな老けてねえわ」
「元気出して、なんて簡単に言えないけどさ。マキノが暗い顔してるとよくないんじゃない?」
「まさかお前に励まされるとはな」
「あたしのおかず。分けたげる」
「まだそんなこと言って……」

 持ってきたお弁当箱を開けてみせる。

「どう?」
「思ったより、ちゃんとしてんな。つーか。何品あんだよ」
「おかずは、五種類。バランスも考えてるよ。若菜には好評!」
「見た目は悪くないな」
「お店でも美味しいって言われたからね?」
「店?」

 ――――しまった。

「なんだよそれ」

 アルバイト、禁止だっけ。