「暇なら掃除でもしてくか」
「暇じゃないって言ってるでしょ」
「じゃあなんで来た。テスト問題でも探しに?」
「そんなことしないから」
「花嫁修行させてやるよ」
「は?」
「整理整頓」
「……コキ使いたいだけでしょ」

 バレたか、とわざとらしく舌打ちをするマキノ。

「いいよ。片付けてあげる」
「ジョークだ。さっさと戻って飯食って勉強してろ」
「勉強より花嫁修行の方があたしには大事だもん」

 謝らなきゃ。さっきのこと。

「そんなことして単位落としたら卒業が遠のくぞ」
「それは困る」
「パパに頼んでなんとかしてもらうか?」
「じ、自分でなんとかするし」

 ちゃんと、謝らなきゃ。

「なんでこんなにゴチャゴチャしてるの。プリントたまる前に整頓したら?」
「お前に説教される日が来るとはな」
「ここは学校だよ。マキノの部屋じゃないの」
「今は俺しか使わない」
「だいたい。昔の新聞なんていらないでしょ」
「ああ。……そうだな、それはゴミだ」
「新聞は新聞でまとめて出すんだよ。油を吸わせて捨てたりもできるの」
「よく知ってるな。洗い物すら自分でしたことないだろうお嬢様が」
「大地くんのお姉さんが、お店のあと片付けしてるの。見たから」
「ダイチくん? ああ。ロリコン野郎」
「そんな呼び方しないで」

 手に取った古新聞。

 【地震】という文字が、飛び込んでくる。