「で? 何の用だ?」

「……あのさ、葵は本当に楓の兄なんだよな?」

「は? 今更何言ってんだよ? そうに決まってんだろ」

 葵は眉間に皺を寄せて、言葉を返した。

「……そうだよな」

 俺は小さな声で頷いた。

「証拠は? 立花の兄だって証明できるか?」

 仁が葵を見つめて、大きな声で言う。

「……証明?」

「葵、免許見せろ」

 仁は低い声で言った。

「は? なんでそんな個人情報晒さなきゃいけないんだよ」

 葵は困惑した顔をして、個人情報を隠そうとした。

「……気になったからだ。逆に聞くが、なんで個人情報を知られるのをそんなに嫌がるんだ? ダチなのに、なんで隠そうとすんだよ? 」

「はぁー」

 葵は深いため息をついてから、ズボンのポケットから財布を取りだして、その中から背面が白いカードのようなものを抜き取った。

……免許証か?

 葵は表面を上にして、それをテーブルの上に置いた。

 その運転免許証は、名前が【立花 葵】ではなかった。

それは、【三田部 葵(みたべあおい)】という人の運転免許証だった。


 言葉が出ない。免許証の写真は葵なのに、苗字が全然違う。

 ……葵は、 俺を騙してたのか?

「どういうことだ、葵!」

 仁が椅子から立ち上がって、葵の腕を掴んで叫んだ。

「……仁、いい。ありがとう。ここから先は俺が聞く。……葵、ちゃんと説明してくれるよな?」

 俺は腕を掴んで仁を椅子に座らせてから、葵を見た。

「……ああ、ちゃんと説明する」

 葵は俺の顔を見て、作り笑いをして言った。