「あ、店長の友達の……」

 店に入ると、カウンターに立っていたスタッフが俺と仁を見て小さな声で呟いた。

 俺が19時半頃に来た時から、カウンターにいた奴だ。

(なぎ)、お疲れ。悪い、今日は早めに帰ってくれるか?」

 葵は店のシャッターを閉めてから、カウンターにいるスタッフに声をかける。

 どうやら、スタッフは凪という名前らしい。

 凪は髪が茶色くて、ウルフカットみたいな髪型をしていた。

「言われなくても早く帰りますよー。今日は店長が急に店閉めるとか言い出したので疲れましたし」

「……開けたり閉めたりして悪かった」

 葵は今日は俺が19時半くらいに来た時に店を閉めて、俺や仁などの華龍の奴らがいなくなってからまた店を開けた。

俺のためとはいえ、やることが少々度が過ぎている。

 ……こんなことをしてくれる奴が裏切りものだなんてことあるんだろうか。……ないよな?

「アハハ。冗談ですよ。気にしてないんで謝んないでください。それに、ここはファミレスとかじゃなくてBARなんですから、店長が好きな時に開けて、好きな時に閉めればいんですよ。俺はそれに口出しはしません」

 凪は声を上げて、楽しそうに笑った。人柄が良さそうだ。

「……おう、ありがとな。早めに寝ろよ?」

 店の入り口近くで立ち往生している俺と仁のそばにいた葵が凪に近づいて、頭を撫でる。

どうやら、だいぶ仲が良いらしい。

「はーい、おやすみなさい」

 凪は葵にお辞儀をして、カウンターの机の後ろにあるキッチンの端のドアを開けて、店を出ていった。

カウンターの机の後ろは右側にキッチンがあって、左側にワイン瓶が置かれた棚が置かれている。ワインはウィスキーや、サングリアなんかの他にも、たくさんの種類のものが置かれていた。