「なぁミカ……葵が裏切り者の可能性は、本当にないんだよな??」

 仁が俺の腕を掴んで、眉間に皺を寄せて言う。

「え? ちっ、違うだろ。葵、楓が生きてたの知らないっていって……」

「親にそれを内緒にされても、兄なら、亡骸見れば楓かそうじゃないかくらいわかるんじゃないのか? 例え顔を見せてもらえなくても、死んだ時の服装とかで分かるはずだ」

 言われてみれば、確かにそうだ。

「……そうかもしんないけど、あいつは少なくとも親父の味方ではないと思う」

 アイツが親父の味方なわけがない。

 でもそれなら、なんで亡骸を見ても楓じゃないってわからなかったんだ?


「……なぁミカ、あいつは本当に立花の兄なのか?」

仁は勢いよく俺の肩を揺さぶった。

「え?」

「……お前は母子健康手帳とかそういう兄だと証明できるものを見てないのに、立花の兄だって言われたから、それを信じたんじゃないのか?
……お前はいつ、どこで葵と知り合った?」

 仁が眉間に皺を寄せて尋ねる。

「……俺は、楓の葬式で葵に会った。おれは楓が死んだのが自分のせいだと思ってたから、式が終わってから会場にいったんだ。そしたら会場で泣いてる葵と出くわして、楓との関係を聞いたら、兄だって言われた」