「……好きか嫌いかって言われたら、多分好きなんだと思う。でも俺、わがままに聞こえるかもしんないけど、アイツにあんな選択して欲しくなかった。……俺を酷い目に遭わせないために身を隠すなんて、して欲しくなかったよ。……どうせ守るなら、俺のこと本気で守ろうとして欲しかった。父さんをぶったみたいにさ、露麻の命令にも反抗してさ、俺を本気で守って欲しかった。……こんなこと思うの、すげぇわがままだよな。楓は嘘の可能性もあるとわかっていながら、本当だった時のことを考えて、露麻に従ってくれたのに」


「いや別に、わがままじゃないだろ。ちゃんと守って欲しいとか、大事にされたいとか考えて当然だ。でもさ、立花のこと庇うわけじゃねぇけど、……執事に急に虐待のこととか説明されて、江ノ島に行かないとミカを酷い目に遭わせるなんて言われたら、混乱してどうすればいいかわかんなくなっちゃってもしょうがないんじゃねぇの?

……まぁ、俺は立花のその気持ちはわからなくもないが、お前にも岳斗にも何も言わないでいなくなったのは、正直かなり頭おかしいと思うけど!」

 腕を組んで、眉間に皺を寄せて、不満げに仁は言う。

「……仁」

「会うなって言われてるから会わないのはまだ分かる。でもさ、メールも電話もしないで、手紙を送ることもしないのは違うだろ。それはマジで違うと思う」

「……そう、だよな」

もしかして、そうしたのにはなにか訳があったんだろうか。