「あたし、気まぐれだからこの日撮影、とか向いてない」

「美矢ちゃんが外で弾きたい日だけで良い。それに、弾き語りだけじゃない動画にもチャレンジしたい。全部、気が向いた日勝手に同行して撮るだけだから」

「顔出しも気が向かない」

「全部今日みたいな画角でやるよ。ね?どうしてもダメ?」


マイペースで、気ままで、自分を発信することを望んでいない美矢だけど、ケンゴの方も絶対に折れない。

僕個人的には……美矢は凄いんだぞって自慢したい気持ちは凄く分かるし、美矢はインフルエンサー向きのように思える。

けど、決めるのは美矢だから、どうしても嫌ならやらなくても良いし、それに、知らない皆に美矢を知られてしまうのもちょっとだけ複雑な、そんな気もしないでもない。


「うーん」と長く唸って瞼を強く閉じて考えるポーズの美矢は、おそらくあの動画の出来が気に入ってはいて、ここだけに留めるのはもったいないという気持ちもあるのだろう。