「めっちゃノスタルジックな気分になる動画作るから楽しみにしてて!じゃーね!」


僕の戸惑いなんて露知らず、ケンゴは撮れた動画の編集を楽しみな気持ちを足取りと声で表現し、ぴゅう、と風が吹くように走っていってしまった。


「まっすぐだねぇ、青少年」

「だね」


そんな後ろ姿に老人みたいな一言を呟くと、美矢も短く答えて柔らかく目を細めた。


「どんな感じで撮影したの?」

「んー?灯台で弾き語りしたんだけど、行くまでに世間話とかしながら普通に歩いて、普通に弾いただけだよ、あたしはね」

「あたしはねって?」


撮影、なんて言ってたから何をしたんだろうって思ってたんだけど、美矢からは緊張感を感じ取ることが出来ない。


「行くまでの道に何個か、ケンゴが小さいカメラを事前に仕込んでたみたいで、そこ通り過ぎたらケンゴが拾いに行って、みたいな。あたしそんなに詳しくないから良く分かんなかったけど」

「へえ、用意周到だね、あの子も」


練習、なんて言ってたけど割と真面目に色々やってたみたいだし、背負ってた大きなリュックは多分、全部今日使った機材だったのだろう。


「どんな風になるのかな、楽しみだな」


美しい街並みに、美矢の美しい歌声と柔らかな旋律なんて、想像するだけで贅沢な素材だ。