「どうして俺がラナを外に出さないと思う?」

お兄さんの吐息がくすぐったい。でもどう足掻いてもお兄さんの抱擁からは逃れられなくて、私は必死に「知らない」と繰り返す。

「こうやって塔に閉じ込めたらさ、ラナのことを独り占めできる。ラナが俺だけを見てくれる。俺だけを愛してくれるでしょ?」

ようやく離してもらえた時、お兄さんの浮かべる顔はとても美しい微笑みのはずなのに、どこか残酷に見えた。いつものお兄さんがいるはずなのに、怖くてたまらない。

「お兄さん……!いつものお兄さんに戻ってよ!お兄さんはこんなことする人じゃないでしょ?」

幼い頃の温かな思い出が蘇る。どの記憶のお兄さんも優しい人だった。私を本当に大切にしてくれていた。でも、今のお兄さんはまるで別人みたいだ。

「何でそんなこと言うの?前までは俺に服従してイイコだったのに……。あの王子に何か吹き込まれたの?ねえ!!」

お兄さんの顔が再び怖くなる。私は後ずさるけど、後ろにあるのは壁。逃げ場を失った私はお兄さんに顔の近くに手を置かれ、さらに逃げることができなくなってしまった。