打ち上げ会を終えて地元に帰ってきたのは、夜8時を過ぎた頃だった。

母は夜勤で、祖母は老人会の旅行に出かけているため、共に不在だったからよかった。


最寄りのバス停でバスを降り、遼とメッセージのやり取りしながら歩いていると、家の前まできたところで、不審な影が見えて、足を止める。



「……何?」


目を凝らすと、晴人の家の前に、何かの物体が。

恐る恐る近付くと、それが、うずくまっている人だとわかった。



「え、もしかして晴人?」


街灯に照らされたそれは、私の声に反応したように、ゆっくりと顔を上げた。

が、その顔は血だらけで、おまけによく見ると服もぼろぼろだった。



「ちょっ、どっ、なっ」


まるで暴漢にでも襲われたみたいな晴人を前に、混乱と困惑で言葉が出ない私。

晴人は「うるせぇ」とかすれた声を出す。



「何でもねぇよ。ただちょっと、先輩らに生意気だとかムカつくだとか言われてボコられただけ。お前には関係ねぇ」

「はぁ?」


確かに、私にはまったく関係のないことだ。

けど、そんな簡単に言うほど、怪我は軽そうには見えない。



「それで何で家に入らずに玄関の前でうずくまってんのよ」

「ぶん殴られた時に、ポケットに入れてたキーケース、どっかに吹っ飛んでった。夜だし体中痛ぇし、探す気にもなれなかったんだよ」


晴人の家は、真っ暗で、見るからに人の気配がない。