私は、ただ私たちの秘密を守りたかっただけ。



「あいつはさ、昔からずっと、幼馴染の俺にさえ、何ひとつ本心を言わないんだ。俺は悩みを打ち明けられたことすらない。だから俺は、あんなにずっと一緒だったのに、ハルのこと何も知らないんだよ」

「………」

「なのにさ、いつもどこか心ここにあらずで、笑ってるけど笑ってないみたいだったハルが、小泉さんのことであれだけ怒ったんだ。理由、知りたくなって当然じゃん」


理由なんて、私の方が知りたいよ。

私だって晴人の本心なんか何ひとつ知らないのに。



「ねぇ、頼むからもう放っておいてよ」


顔を覆い、肩を震わす私を見て、ゆっこは「ごめん」と言った。



「ごめんね、リナ。私ずっとリナに謝りたかったの。あの頃、うちらはまわりの空気に流されて、リナのことハブってた。たとえ何があったって、そんなことしちゃいけなかったのに」

「終わったことだよ」


そうだ。

何もかもが、もう終わったこと。



「ねぇ、お願い。もう私たちの過去には触れないで」


私の言葉に、ふたりはまた顔を見合わせ、でも今度はもう何も言わなかった。


空の色も、風の音も、何もかもがあの頃に繋がる。

この田舎町にいる限り、私と晴人は、ずっと過去に縛られなくてはならないのか。