強く言った。

これで引き下がってくれるかと思いきや、ふたりは顔を見合わせ、言いにくそうにしながらも、私を見た。



「俺ら、夏休みに久しぶりにハルに会ったんだ。それで色んな話してた時に、俺、言ったんだよ。『そういえば俺、小泉さんと同じ高校なんだ』って。『話し掛けようとしても俺はシカトされまくってるけどね』、『結局、お前と小泉さんの噂って何だったの?』って言ったら、あいつ急にキレてさ」

「………」

「『今更、里菜子に余計なこと言うんじゃねぇぞ』って」


晴人が。



「俺ら、びっくりしたよ。ハルが急にキレたこともだけど、小泉さんのことを『里菜子』って呼んだんだもん」

「………」

「俺らはふたりが喋ってる姿なんか一度も見たことなかったし、ましてや小泉さんのことを名前呼びするような仲だなんて知らなかった。しかもみんなが呼んでる『リナ』じゃなくて、『里菜子』だなんて」


私を『里菜子』と呼ぶのは、昔も今も、世界でたったひとり、晴人だけ。

遼でさえ、私を『リナ』と呼ぶのに。



「ねぇ、リナ。やっぱりふたりは、ほんとは付き合ってたんじゃないの?」

「だから、そんなわけないって何度も言ったじゃん! 私と晴人は」


言い掛けて、はっとした。

慌てて口をつぐんだが、しかしふたりは聞き逃してはくれない。



「リナ、今、ハルのこと『晴人』って……」


あぁ、もう、最悪だ。

唇を噛み締める私に、竹田くんは言った。



「ふたりはそうやってお互いを庇い合って、一体、何を守ろうとしてんの?」