そう訊くと、伊織サマはまた顔を真っ赤にして、「マジか……」と呟いた。 「いお……り……?」 呟いたのは、ワタシでも伊織サマでもなかった。 その声は、ワタシ達の耳には届かずじまい。 その声を発したのは、玄関で立ち尽くすワタシのご主人様で伊織サマのお母さん——沙織(さおり)さんの声だった。