「あ、そーだ…
さっきさー、すれ違った人に
ハチマキ欲しいって言われた」

上杉が言った



やっぱり、言われるよね…上杉


じゃあ…
上杉に返さなきゃ…




「…ハイ…」



私はジャージのポケットから
ハチマキを出して

上杉に渡した




「え、なに?
返却とか、あり?
そんなルールあんの?」



「え…?」



「オレ、折原にあげたんだけど…」



「え、落ちてたって…」



「そんなん、ウソ…
ポケットから出てたから取って
すり替えて渡した」


そう言って上杉は教室に誰もいないか確認した



気付いたら
いつの間にか誰もいなくなってた




「折原と交換したかったけど…
…ヤダった?」



放課後の教室に上杉の声が響いた



胸がキュッてなった



「いいの…?…ありがと…
嬉しい!」



「よかった…
返却とか恥ずいし!」



上杉が笑った


私も笑った