「悪いけどマネージャーは今募集してない。
それと、クッキー渡すだけなのに俺を呼ぶ必要あった?」
「……え?」
きょとんとした彼女達の声が重なる。
「見て分かると思うけど、今休憩中なんだよね。部員の為に何かしたいなら、貴重な休憩時間を割くような真似しない方がいいんじゃない?
クッキーなんて、さっき通った野口にでも渡せば済んだでしょ」
俺の言葉を聞きながらみるみる彼女達の顔は引きつっていき、終いには鬼の形相へ変わり果てた。
「何それ、ひどすぎなんですけど!」
「そこまで言うことないじゃん!」
「……いいよ2人とも、確かにマイ達も悪かったし……」
「マイは優し過ぎだよぉ」
「もう行こ!」
ふんと鼻を鳴らして立ち去っていく女子3人を最後までは見送らず、俺はくるりと踵を返して部員のもとへ戻った。
「はいこれ。クッキーの差し入れだってさ」
「おお!すげぇー!ボールだ!」
「女子からの手作りクッキーだー!」
「てか宗司さぁ……確かにさっきのは言い過ぎだろ〜」
クッキーを受け取ってがやがや騒ぐ部員を横目に、野口は顔をしかめて俺に近寄って来た。
……言い過ぎ?
「正論だろ。マネージャーも1人で十分だし」
「いやでも……せっかく好意示してくれてんのにさー」
「興味無い。応援してくれるなら邪魔はしないで欲しい」
「はぁー、まじで宗司って厳しいよな」
野口が呆れたように笑うと、クッキーを嬉しそうに頬張っていた他の部員も話に入ってきた。