「宗司、ご指名だぞー」
顔を洗いに行っていた野口がそう言いながら俺達のもとへ帰ってくる。
野口が指差す方へ顔を向けると、体育館の扉付近でこちらを眺めている女子3人が目に入った。
他の部員が「ひゅーひゅー」と古臭い煽りをしてくるのを無視しながら、俺は溜息を漏らして立ち上がった。
「……何」
「あ、支倉くんっ」
女子のもとへ近付くと、嬉々とした表情を浮かべてこちらを見上げてきた。
俺はタオルで汗を拭きながら彼女達を見下ろす。
「部活お疲れ様。これ……良かったら皆で食べて?」
「これマイが作ったんだよ!クオリティ高いでしょ〜」
マイと呼ばれた女子が俺に箱に入ったクッキーを手渡してくる。
クッキーはバレーボールの形に焼かれていて、確かにクオリティは高い。
「……どうも」
「あ、ちなみに今男バレってマネ募集したりしない?」
「マイが部員の為に何か力になりたいみたいでさ!」
〝マイ〟を取り巻く2人が目をギラギラさせて俺に迫る。
俺は彼女達をゆっくり見回して、あからさまに溜息をついてみせた。