「じゃあ、いってきます」

 スーツ姿の景虎がリビングを横切る。私はその後ろを玄関までぴったりとついていく。

「いってらっしゃい」

 靴を履いた景虎は振り向き、私の肩を抱き寄せる。彼は啄むような一瞬のキスをし、ニッと口角を上げて微笑んだ。

──ずっと、あなたが好きでした。

 私はこの恋を、生涯手放すことはないでしょう。例えまた頭を強く打って、すべての記憶を失くしたとしても。この魂に刻まれた恋は、消えることはないのだから。

 神様じゃなくて、あなたに誓うよ。

 私は何度忘れても、また必ずあなたに恋をします──。

【end】