「最近キレイになったよネ?」
そう言って現れたのは、男友達の漣 蒼斗だ。
学校の廊下を歩きながら、今し方先生に頼まれた資料本を片付けに社会科教室に向かっていた時だった。
両手で抱えた四冊の本が急に二冊になったのを見てから、私は左隣りを見上げた。
「……ってさぁ? さっき告白された時にそう言われてなかった?」
漣は意地悪い笑みで私を見ながら、資料本の全部を私の手から取り上げた。
「み、見てたの?」
言いながら鼓動が不規則な音を立てる。
平静を装いながらも、内心では"しまった、どうしよう?"と慌てふためいていた。
私は彼に気取られぬよう、取り上げられた二冊を取り返した。
「香月は頑張り屋さんだネ〜」
「……わっ、私が頼まれたから」
知らず知らずのうちに、私は意中の漣と並んで歩く形になる。
「さっき告ってたの、サッカー部の飯塚でしょ? 良かったの? 断って」
つい十分ほど前の事を思い出し、私は「うん」と答えながら頷いた。
不自然に顔が熱くなるのを感じた。
ドキンドキン、と心臓がまたうるさくなる。