「うん。
 なんだかすごく夏菜を愛している気がしてきたぞ!」
と有生が高らかに叫ぶ。

 それたぶん、ただの負けず嫌いですよね……。

 有生の前に立つ指月が上司を見るとも思えない態度で有生を見、

「私も社長に藤原は渡しません。
 私も彼女に結婚を申し込みます」
と言い出した。

 負けず嫌い、ツー!

 最早、愛が何処にあるのかわからない、と思いながら、なんだか事態がややこしくなってきたので、その日は三人で道場に帰り、夏菜の祖父に指月とともに話をした。

 祖父、頼久(よりひさ)は指月と有生の話を聞いて、ほうほう、と笑い、

「いやいや、夏菜は我が孫ながら、女らしさを育てそびれたなと思っていたから、嬉しいかぎりだ。
 こんないい男たちが夏菜を争ってくれるとは」
と機嫌がいい。

「よし。
 指月、社長に刃向かい、夏菜を手に入れようとしたその心意気に免じて、お前にも夏菜を争う権利を与えよう。

 ……まあ、正直言って、お前たちが争うのが、この夏菜でいいのかと申し訳ない感じだが」
と孫に容赦ない言葉を浴びせながら、頼久は言う。

「より大事にしてくれそうな方を夏菜の夫にしたいのだが。
 そんなものはすぐには見極められぬから、より強い方が夏菜の夫ということにしよう」

 何故っ?