「夏美ちゃん、料理はするんでしょ。仕事中でも食べられるように、栄養バランスを考えて、精のつくものを作ってあげたら? 愛する妻が自分のためにお弁当作ってくれたってだけで、パワー出ると思うわよ」
「そっかぁ、それいいですね」
愛する妻かどうかはともかく……。今まで誰かのためにお弁当を作ったことなんてないから、その考えはなかった。たしかに外食やお惣菜ばかりでは飽きてしまうだろうし、続けば健康的とは言えないかもしれない。
「お弁当のメニューに困ったらメッセージちょうだい」
綾さんは料理も得意なのだ。さすが、頼りになる。
「しかし、あの夏美ちゃんがねぇ……」
「なんですか?」
ワイングラスを揺らしながら感慨深そうな目をして綾さんが言う。
「仕事以外で、誰かに何かをしてあげたい、自分がしてもらった分を返してあげたいなんて思うようになるなんてね。愛は偉大だわね」
おねーさん嬉しいわ、なんて感極まったふりをする。
「や、やだそんなんじゃないですよ」
ただ恩返しをしたいってだけで、愛だとかそんなんじゃないのに。
焦る私を見て、また綾さんふっと微笑む。
「いいんじゃない。今の夏美ちゃんとっても綺麗よ」
酔っているせいなのか、私はやたらと赤くなったらしく、その後も綾さんに散々いじられてしまった。