今夜は私の結婚祝いということで、綾さんがオーナーと懇意にしているというフレンチレストランでごちそうしてくれることになった。


「夏美ちゃん、結婚おめでとう」

「ありがとうございます」

 キリリと冷えた白のシャブリで、軽く乾杯をする。


「いや、まさか本当に結婚しちゃうとはねぇ」

「婚姻届まで用意しておいて、なに言ってるんですか」

「あれ、バレてた?」と言って、綾さんがペロリと舌を出す。

「おかげさまで、彼の実家に行ったその足で入籍だったんですよ」

「善は急げっていうじゃない。玉の輿ゲット! やったね」

 小さく万歳をして、綾さんは悪びれることもなくはしゃいでいる。まったく、彼女には敵わない。


「それにしても急な結婚で驚いたけど、なんだかんだうまくいってるんじゃない」

「そうなんですかね……?」

 新婚生活はどうかと聞かれ、家での様子を伝えると、綾さんは嬉しそうにそう言った。結婚をけしかけてはみたものの、やはり心配もしていたようだ。