そしてまた私は、わからなくなってしまう。


 私たちの結婚は、お互いの利害の一致のもとに行われた契約結婚だったはずなのに。いつまで一緒にいるかもわからないのに、拓海は私のことをもっと知りたいなんて言う。


 拓海がリビングに引っ張り出して来た碁盤は、どう見てもそこそこ値が張るものだった。

「さあ、やろう。なにからはじめたらいい?」

「……わかった。じゃあまずは挨拶からね。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


 拓海の態度に戸惑っていたくせに、私自身、この生活がずっと続いて行くような気がしている。困ったことに、拓海の隣にいることを居心地よく感じている。


 忙しい人だし、案外その熱もすぐに冷めるんじゃないかと思っていたけれど、そんなことはなかった。

 夕食のあとや休日のちょっとした時間に、拓海と囲碁を打つことが、いつの間にか私たちの習慣になっていた。