「……君たちの気持ちは、よくわかった。出過ぎたことを言って悪かったね」

 拓海の真摯な姿は、おじさまの心を打ったようだった。


「私は夏美ちゃんのことが実の娘のように可愛くてな。どうも彼女のこととなると、熱くなっていけない」

「おじさま……」

 おじさまからの、家族にも負けないほどの愛情は、私だって日々感じていた。その深すぎる愛情をときには疎ましく思ったこともあったけれど、ありがたさは誰よりも感じている。

「彼女のこと、大切にします」

「ああ、信じているよ」

 おじさまと拓海は、固い握手を交わしている。

 その光景を見ているだけで、おじさまに、最大限の孝行をしているような気がしてくる。

 
 最後まで、みんなに祝福されて結婚する幸せなカップルを演じて、私と拓海は社長室をあとにした。