「でも、夏美に今のあなたになにかできるのって言われて、たしかにそうだよなって思った。自惚れてたんだよな。弁護士一家に生まれて、勉強もそこそこできて、経済的にも恵まれていて。全部親や周囲から与えられたものなのに、自分は人の役に立てる特別な人間だって思いあがってた」

「そんなことない、私の方が拓海に甘えてたんだよ。拓海は心配してくれたのに、あれは私の八つ当たりだったの。私……ずっと後悔してた」

 優しい拓海のことを、こんなにも深く傷つけていた。いくら謝っても足りないくらいだ。


「いや、夏美に謝ってほしいわけじゃないよ。後になって、ずいぶん無神経なことを言ったなって後悔した。謝りたいと思っていたのは、俺の方だよ」

 自分の行いを悔やんでいたのは、私だけではなかったんだ。


「それに、夏美にはむしろ感謝してるんだ」

「えっ、感謝?」

 どういうことだろう? 怒らせるならまだしも、感謝されるような覚えはない。