商店街のメインストリートを歩いていると、懐かしく香ばしい匂いが鼻を掠めた。

「ねえ、この匂い」

「菅原屋だな。行くか!」

 菅原屋というお肉屋さんのジャンボコロッケはここの辺りでとても有名で、学校帰り、店先から漂う匂いにつられて、よく買い食いしていた。

「夏美も食べるだろ」

「あっ、せめてここは私に払わせて」

 さっさとお店に向かおうとする拓海を制して、私は小走りで列に駆け寄り並んだ。


「よかった。買えたよ!」

「おお、でかした夏美」

 人気の商品だから、夕方になると売り切れることもあるのだ。私も何度か悔しい思いをした。


 食べやすいようテイクアウト用の紙に包んでもらって、商店街の端にある公園で拓海と熱々揚げたてのコロッケにかぶりついた。

 木陰にあるベンチに座り、夕方の涼しい風に吹かれながら、美味しいものを食べていると、得も言われぬ幸福感で満たされる。


「あー、美味しい。幸せだぁ」

「懐かしいな。俺、ここのコロッケなら十個は食べられる」

「絶対ウソ! そんなに食べられるわけないじゃん」


 ジャンボコロッケと言うだけあって、野球ボール一つ分くらいの大きさがあるのだ。いくら体格のいい拓海だって、一度にそんなに食べられるわけがない。