拓海が連れてきてくれたのは、高級ホテルの中にあるイタリアンレストランだった。

 ホテルに着いたときもそうだったけれど、拓海と一緒にいると、周囲の、特に女性からの視線が集まることに気がついた。

 背が高く見目も麗しい彼は、そこにいるだけで周囲の目を引く。ひとしきり彼を眺めると、人々の視線は隣に立つ私に向く。

 ただでさえ不釣り合いだというのに、今日の私の装いはこの場にはカジュアルすぎたかもしれない。

『あんな人と一緒にいるのが、あれ?』そんな心の声が聞こえて来そうで私はつい体を縮めてしまう。


「どうかした?」

「ううん、なんでもない。なに食べよっか」


 案内されたテーブルに着き、メニューを広げて目を丸くする。イタリアンっていったらパスタとかピザとかそんなものだろうと思っていたけれど、私には見慣れない料理の名前がずらりと並んでいる。

「なににする?」

「……ごめん、拓海に任せてもいい?」

「いいけど。夏美って、苦手なものあったっけ?」

「なんでも食べられるよ、大丈夫」

 変なことを口走って、これ以上拓海に恥をかかせるわけにはいかない。私は力なく微笑んで、ミネラルウォーターを口に含んだ。