「自分の気持ちがわからなくなってきました……」

 頭を抱える私に、綾さんがくすりと微笑む。


「もう一度、祖父江さんと会ってみたら? 友人としてじゃなく、結婚するかもしれない相手として彼のことを見てみれば? 意識するとしないじゃ、きっと見えるものも違うからさ」

 思い切って拓海に会ってみれば、このはっきりとしない感情の正体がわかるのだろうか。

「もし失敗しても、今どきバツの一つや二つ大したことないわよ。経験者の私が言うんだから間違いないって。……それにね、バツイチって案外モテるのよ」

 うふふと含みのある笑いをして、また綾さんがジョッキをあおる。

 綾さんったら、これじゃあ結婚を勧めてるんだか離婚を勧めてるんだかよくわからない。


「とにかく、もう一度会って自分の目で確かめてきなさい」

「わかりました」

 綾さんの言葉が、私の背中を押した。