「うわぁ、夏美ちゃん強い。そして最悪」

「ですよね……」


 思い出すだけでも、顔から火が出そうになるほど恥ずかしい。
そして自分の実力不足を棚に上げて、おまえはなにを偉そうに言っているんだ、と思う。

「誠実で博愛主義のかたまりみたいな人なんですよね。だから私のことも放っておけなかったんだと思います」

 その上、面と向かってあれだけのことを言われたのに、全てをなかったことにして、困っていた私を助けてくれた。拓海は根っから『いい人』なのだと思う。

「なんだ、別に嫌ってるわけじゃないのね。それなら逃げ出す必要もなかったんじゃないの?」

 グラスのワインを飲み干し、綾さんが言う。三本目のボトルも残りあと僅かだ。

「今さら普通に話すなんて無理です。申し訳なさすぎて」

「ふーん?」

 綾さんは納得がいかないというふうに首をかしげた。

 テーブルに置いていたスマホをチラリと覗く。もう22時を過ぎている。そろそろ帰らないと、二日酔い知らずの綾さんはともかく、私は明日がきついかもしれない。

 なんてことを考えていると、画面がパッと明るくなり、見たことのない番号が浮かんだ。