店の外に出て、新鮮な空気を吸う。ついこの間まで夏のような暑さが続いていたと思っていたのに、11月の空気はすでに冬の気配を纏い始めている。

 寒さで背中を震わせて初めて、上着を着て出てくるべきだったことに気がついた。

 幸い荷物は個室の隅に置いてある。幹事の子にだけ一言声をかけて、このまま帰っちゃおうかな。そう思ったときだった。


「寒いだろ。よかったら、これ使って」

 肩にふわりと濃紺のジャケットが掛けられた。

「……拓海」

 いつの間にか、拓海も外に出て来ていた。

「なんで?」

 彼は煙草を吸うわけでもない。なぜ外に出て来たのだろう。

「夏美が元気なさそうに見えたから、気になって」

 こうして彼が追いかけてきれくれるほどだから、よほど私は冴えない表情をしていたのだろう。

「ちょっとだけど、話聞いた」

 話とは、プロ試験のことだろう。いい結果を出せずに落ち込んでいるとでも、絵梨か誰かが言ったのかもしれない。


「俺になにかできることはない?」

 私は驚いて彼を見上げた。