「夏美から一文字取って、小夏。ちなみに春生まれなのは本当」

「嘘でしょ。それじゃあこなつがなかなか懐いてくれなかったのって」

「自分が呼ばれてるとは思ってなかったのかもしれないな」

 そういえば、拓海も佐奈さんもこなつのことを『こはる』とは呼んでいなかった。拓海にそうと言われた私だけが、この子のことをこはると呼んでいた。

以前、佐奈さんがうちに来た時に『夏美さんには懐かない』と言ったのも、そういうわけだったんだ。

「拓海ってばひどい!! こはると仲良くなりたくて、私はあんなに必死だったのに!」

「だから、それは本当に申し訳なかったって思ってるよ……」

「佐奈さんのことも、ちょっぴりだけど意地悪なんじゃないかって思ってたんだよ!」

 彼女は意地悪であんなことを言ったんじゃない。私にヒントをくれたつもりだったんだ。

「……拓海の意気地なし」

「意気地なしでけっこう。もうなんとでも言ってくれよ。夏美の前では精一杯かっこつけてたのに、全部台無しだ」

 自棄になったのか、拓海は次々に自分をさらけ出す。

 でも完璧な弁護士であり旦那さまの、こんなに可愛くも情けない一面を見ることができて、嬉しいと思っている自分もいる。