「もっと自分に自信をつけて、夏美にふさわしくなってから告白しようって決めたんだ。それなのに、アメリカから戻って、せっかく再会できたと思ったら……」

 ふたりの過去を気まずく引きずっていた私は、拓海から逃げ回ってばかりいた、というわけだ。

「ちっとも相手にしてもらえなくて、本当にショックだったよ」

「だから、それは本当に悪かったって思ってるって……」

 そうこうしているうちに、佐奈さんとの縁談が持ち上がった。なにか策はないかと考えている時に、再びおじさまから連絡をもらった。

「榊社長から、夏美ともう一度会ってくれないかって連絡をもらったんだ。これが最後のチャンスだと思って、一も二もなく飛びついた」

 なんとかして私を手に入れたい一心で、契約結婚を申し込んだと言う。

 初めは契約結婚でも、一緒に過ごすうちに本物の夫婦になれればいい。そう思って拓海は私と過ごしていた。

 こうして、晴れて佐奈さんとの縁談は破談になった。その経緯を佐奈さんに話すと。

「なんとかして、正々堂々と夏美さんのこと口説けばよかったじゃない。ホント拓海って意気地なしね!」と一蹴されたという。

「ああ、だから佐奈さんあんなこと……」

 いけないとは思いつつも、つい笑ってしまう。『手のかかる弟』だなんて、正式に拓海の義姉になったとはいえ、5歳も年下の佐奈さんから結構な言われようだった。

「そのおかげで兄貴と結婚できたってのに、ひどいよな」

 しゅんとする拓海のもとに、昼寝から目覚めたこはるが寄ってきた。