片づけをしていると、スマホが鳴った。拓海からのメッセージが届いていた。

『夏美元気にしてる? 明日戻る。お土産楽しみにしてて』

 男の人ってこんなものなんだろうなってくらい、シンプルで短いメッセージ。それでも仕事の合間に私のことを思い出してくれているって思うだけで、嬉しくなってしまう。

 拓海の出張先は台湾だ。あちらは日本以上に湿気がひどいと聞く。バテたりしてないかな。ちゃんとごはん食べられているだろうか。

『元気だよ。いまこはるにごはんをあげたところ。こはる寂しそう。早く顔を見せてあげて』

 訊きたいこと、話したいことはいっぱいある。でも長文を打つことはせずに、必要最低限、こはるの様子を拓海に知らせた。

 こはるは佐奈さんから譲り受けた大切な子だ。きっと拓海も気にかけているはず。


 メッセージを送信して、片づけの続きをしていると、今度は着信が鳴った。

 電話は拓海からだった。

『あ、夏美? 今話せる』

 ほんの数日会っていないだけなのに、電話越しの拓海の声がひどく懐かしいものに感じる。自分の気持ちが溢れてしまわないようそっと息を吐いて、拓海に応えた。

「大丈夫よ。なにかあった?」

『なにかあったわけじゃないんだけど……』

 そこまで言って、拓海が言い淀む。私は黙って、話の続きを待つ。

『夏美の声が聞きたかったんだ。それにメッセージ、こはるのことばっかりだったからさ』