拓海に対して複雑な気持ちを抱いたまま、二週間ほどが過ぎた。

 ちょうど拓海は、顧問弁護士を務めている会社で海外企業との折衝の仕事が入り、調べ物や契約書の作成で帰りが遅くなったり、海外への出張が入ったりして、家を空けることが多かった。

 不在がちな拓海を恋しく思う反面、彼への気持ちを抱えたまま苦しい思いをしないですむことにホッとしている自分もいる。

 綾さんには、いっそのこと拓海の気持ちを確かめてみたらと言われているけれど、私はなかなかその踏ん切りがつかずにいた。


「こはるー、ごはんだよー」

 私が呼ぶと、拓海の部屋からこはるが出てくる。

 最近は、名前を呼べばなんとか私の前にも姿を現すようになってくれた。でも私が触れようとすると、こはるは毛を逆立てて怒りをあらわにする。そしてまた、拓海の部屋に籠ってしまう。

 昨日もおとといも、こはるはいつもの半分くらいしかごはんを食べてなかった。

「こはるも拓海に会えなくて寂しいんだよね」

 どんなにこはるにつれなくされても、もう数日拓海と会えずにいる彼女と自分が重なって見える。

「後でもいいから、ちゃんと食べてね」

 こはるの前にごはんの入った皿を置いて、私は静かにその場から離れた。