都会の明るい夜空の下、大輪の花火が次々に打ち上がる。その光景を、私はぼんやりと見ていた。
「夏美」
拓海が私の顔をのぞき込んでくる。
「うん?」
「たぶん次が、最後の花火だよ」
その夜一番大きな火の玉が夜空を駆け上がって、空一面を覆い隠すような大輪の花を咲かせた。ほんの一瞬花開いて、ばちばちと音を立てながら、夜空に散っていく。
「終わったみたいだね」
終了のアナウンスがあたりに響き、人々は帰り支度をはじめている。
「混む前に出ようか」
拓海にそっと手を握られ、私たちは駐車場に向けて歩き出した。
「今日はありがとう。楽しかった」
家へ帰る道すがら、冷房の効いた涼しい車内で拓海の横顔に向かって話しかけた。
「どういたしまして。楽しんでもらてよかったよ。でも暑かったし、疲れただろ」
拓海の実家に寄ってから、ほぼ半日。お祭りに囲碁に花火大会。とても密度の濃い一日を過ごした気がする。