やはり師事している先生に打ち方も似てくるのか、茉莉花ちゃんは表情を乱すことなく淡々と次の手を打って来る。先を読む力もあるし、私なりに意外な手を打っても動じない。

教室で教えていた頃とは比べ物にならないくらいに強い。次はいったい、どんな手で攻めて来るのだろう。対峙していると、こっちまでワクワクしてくる。

 当たり前だけれど、拓海との対戦とは比べ物にならにほどの激戦になった。もう少しというところで、私がなんとか逃げ切ることができた。

「ありがとうございました」

 一礼をして、顔を上げる。茉莉花ちゃんの目は、悔しさからか、涙でうっすらと濡れていた。

「茉莉花ちゃん、すっごく強くなったね。今日はぎりぎり勝てたけれど、もう次回はわからない」

「そんなことないです。夏美先生はやっぱり強い」

 歯を食いしばるようにして言うと、茉莉花ちゃんは私の目をしっかりと見据えた。