「すごい! 本当に当たった!!」

 拓海は狙い通り、スナック菓子の袋に玉を当てると、見事に下に落とした。


「すごいな兄ちゃん。あんたみたいなのが来ると商売上がったりだよ」

 露店のおじさんが、参ったなと頭を掻きながらお菓子を手渡してくれる。

「その分奥さんが収穫ゼロだったんで、プラマイゼロですよ」

 そう言って、拓海が私の肩を抱き寄せた。

 奥さん、だなんて。人前で言われると、つい恥ずかしくて俯いてしまう。赤くなってもじもじしていると、「うらやましいねぇ、おふたりさん。ラブラブだな」とおじさんに揶揄われた。

「まあ、奥さんも旦那さんに教えてもらって腕を磨きなよ。また来てくれよな!」

 おじさんは豪快に笑うと、お菓子を一袋私にサービスしてくれた。
 

 たっぷりとお菓子が入った袋を下げ、拓海とブラブラと露店の合間を歩いた。

「拓海ったら、どうして射的まで上手なの」

 おぼっちゃま育ちのくせに、あんな庶民の遊びまでマスターしてるだなんて、なんだが悔しい。

「子どもの頃、お祭りに来ては兄貴と勝負してたんだ。ああ見えて、兄貴は俺以上の腕前だ」

 湊人さんも射的を? 拓海とはまた違う、王子様のような雰囲気の湊人さんにそんな特技があるなんてちょっと意外だ。