「……お願いだからなにか言って?」
「驚いた……。すごく綺麗だ、夏美」
「でしょう? 夏美ちゃんをイメージしながら選んだんだけど、あまりにぴったりで母さんも嬉しくなっちゃったわ」
お義母さまだけでなく、拓海にも褒めてもらえてホッとする。
「お義母さまも、拓海も素敵なサプライズをありがとうございました」
「こんなサプライズなら、私だっていつでも歓迎よ。またいつでもご依頼くださいな」
お義母さまのおどけたセリフに、三人で笑い声を上げる。
冷やしておいたみつまめを一緒にいただいて、なんと拓海も自前だという浴衣に着替え、私たちは祖父江邸を後にした。
降り注ぐ真夏の日差し、近づいてくる祭囃子。夏祭りの会場は、花火大会までまだ十分時間があるというのに、大勢の人々でごった返していた。
「あ、ちょっと待って拓海」
歩いているだけで体がぶつかってしまうくらいの人ごみと、慣れない下駄のせいで、気をつけていないと拓海から離されてしまう。
「夏美、離れるな」
一歩前を歩いていた拓海が、私の手をぎゅっと握った。
「た、拓海」
「こうしてないと、迷子になる。嫌か?」
「ううん、そんなことない」
手汗をかいていて恥ずかしいとか、さらに近くなった距離が照れくさいとか、ちょっと思ったりもしたけれど、拓海とはぐれたくはない。二人手を繋いで、露店が立ち並ぶ通りを散策した。