扉を開けた。すると予想どおり窓の向こうにバルコニーが見えた。その向こうにはビルの明かり。夜景なんて洒落たものじゃない、ただの都会の夜だ。

「まさか、その格好で外に出るの?」
「外には出ない。外の空気を吸いたいだけよ」
「寒いです」
「確かに窓を開けたら寒いけど・・・」

 そっと後ろから抱かれた。音もなく近づいたきみの腕が優しくわたしを抱いた。

「そうじゃない。僕が寒いんだ。貴女がいないと寒くて寂しい」

 取り上げられたタバコの代わりに、きみの唇が押し付けられる。

「タバコを返して・・・」
「駄目です」

 もっと強いきみのくちづけが、わたしの抗議のささやきを封じてしまう。まったく酷い年下男だ。セックスした後の一服がどれほどの至福か知らないなんて。

「キスがタバコの味がする」
「悪かったね。嫌なら他の・・」
「他の女はいらない。僕が欲しいのは貴女だから」
「・・・そう」

 それなら、タバコがどうのなんて余計なことは言うなよ。男は黙って抱けばいい。





- End -