左手を伸ばし、サイドテーブルの上にあるはずのタバコの箱を探す。仰向けのまま一本取り出して唇に差し込む。

 喉が乾いた。セックスのあとはいつも喉が乾く。ベッドから降り、タバコをくわえたままグラスを探していると、きみが喋った。

「はあ・・エッチのあと、すぐにタバコを吸うなんてどっちが男なのかわからない」
「悪い?」
「いいえ。別に」
「男ならエッチなんて言わないの。そんな言い方をする男は軟弱なイメージしかない」
「相変わらずきついなあ」
「嫌なら他の女とセックスしなよ」

 ガラスケースの中からグラスを取り出す。透明なサーバーに入ったミネラルウォーターを注ぎ、一気に飲んだ。火照った身体が急速に冷えてゆく。

「裸で寒くないですか」
「寒いよ」
「やっぱりかっこいいな」
「何が?」
「貴女が。そうやって裸で真っ直ぐに立って水を飲んでいる貴女がたまらなく素敵だ」
「また抱きたくなったのなら、素直にそう言えばいいのに」
「また抱きたくなりました。だからこっちへ来てください」
「タバコを吸ってからね」

 ベッドからジッと見つめているきみを無視して、ベッドと反対側にある扉の前に立つ。扉の裏にはテラス窓があるはず。さらにその向こうはバルコニーがある。こういうホテルは外から見えないように内側から窓を塞いでおり、それがわたしには息が詰まりそうで好きじゃなかった。