「・・・その代わり、俺高校卒業したら働くからさ、そしたら一緒に住もう。」

「え?!」


さらに織果の顔が驚きで目が丸くなる。

こんな声が響くような空間で、言ってから急に恥ずかしくなって

何も返してこない織果から目を反らすと湯気が小さく揺れた。


「・・・イヤなのかよ。」

「・・・・・私、こんなんなのに・・・?」

「・・・自分で「こんな可愛いのに」って??」

「ちがう・・・
ずっとこんな小さいままかもしれないのに??」

「小さいだろうが何だろうが俺はお前がいいんだけど」

「・・・うん。」


織果の目頭の雫が光った気がした。

風呂入ってるから当たり前かもしれないけど。


「ほんとなんで私、こんな子供になっちゃったんだろうね。」


あははと困ったような顔で笑う織果にチクリと胸が痛んだ。



鼻から大きく湯気を吸い込むと、ふぅっと口から息を吐き湯船に小さな波を作る。

その波が織果の方まで振動するように這っていくと、

俺は覚悟を決め織果をゆっくりと見据えた。



「・・・織果、俺は、

俺が勝手に他の奴らに嫉妬してたせいで、
ずっと思っていたことがあるんだ。」


「ん?」と鼻をすすりながら俺を見る織果。

その大きな瞳がゆらゆらと揺らめく。



「お前が子供になればいいって───」



『ただの俺の独占欲でお前は小さくなったかもしれないんだ』



口にした瞬間、自分の目頭も熱くなった。



『だからさ、俺が責任取らないと』




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織果の靴が少し小さくなって、俺の買ってやったキュロットが短くなったと思うようになったのは、それから少し経ってからのことだった。







-番外編 fin-