スマホからは途切れることのないコール音が聞こえて、その音がどんどん遠ざかるような錯覚に襲われた。

凌久の息を呑む音が聞こえると、私もそれが移ったかのように息を呑み込む。


「もしかしてハン君は・・・ヴァンパイアじゃないんでしゅか・・・?!」

「・・・なんで、ボクがヴァンパイアだと思ったの??」


───何で私、ハン君がヴァンパイアだと思い込んでいたんだろう。

てっきり大学で、私の匂いに釣られて話し掛けて来たんだと思ってた・・・

ハン君は一言も自分がヴァンパイアだなんて言ってないのに───


「言ったよね?ボクは"狂喜の血"の匂いじゃなくって、伊東さんの匂いが好きだって。」

「じゃあなんで私に近付いて来たの?!」


私の血を狙っているわけじゃないなら、一体何のために


「何回でも言うよ。ずっとずっと前から、君のことが好きだったんだよ。」

「私のこと、元々知ってたんでしゅか・・・?!」

「・・・うん。ボクが10歳の頃から、ずっとずっと君を想ってきたんだよ。
君がボクと同じ、"狂喜の血"を持つ人間だから。」


・・・「狂喜の血」を持つ者は狙われる存在のため強さが与えられる。

今の私には何の力も無くって、

スマホからは留守番電話の音声が流れ始めた。