荷物をとるため教室に戻り、帰る支度をして靴箱に……


行こうとしていたら少し表情の硬い友恵に引き止められた。


「これで話せなかったら今日は諦めるから、もう1回体育館行かない?」


友恵が積極的!!


「もちろん!!」


興奮気味だったので声が大きくなってしまった。友恵は私の声に驚いた顔をしたが、緊張は解けたようだ。


「よし!」


と友恵は今日最後のチャンスに手を合わせてぎゅとそこに念を込めた。


「いくか!」

「うん!」


いざ出陣!といった歩きでさっきの渡り廊下に向かう。


体育館はまだ明かりが付いていた。


そっと覗くと、滝川くんがサーブ、和泉くんがスパイクを他のセッターさんと練習していた。


黙々と練習をする男子の顔はかっこいいけど、なんか怖い。空間的に女子には入れないような空気感だ。


でもさすが強豪。自主練も欠かさないみたい。

親衛隊は……いない。帰ったのか?


こちらの存在に先に気づいたのは滝川くんだった。


「あれ!ともちゃんどうしたの?忘れ物?」

「ううん。ちょっと帰りに寄ってみただけ」


この時の滝川くんの様子に私はとても驚いた。あの殺人鬼ばりに怖かった滝川くんの表情が一気に緩んだのだ。


しかもさっきの爽やか〜な感じではない。なんだろう、犬が心を開いてて安心しきった顔みたいになってる。


疲れてるから余計に緩みやすいのかもしれない。


けど、これは……

おおっと?
友恵さんよ、脈アリでは?


いやいや勝手な憶測で物事を判断しちゃいけないよね。


「そうなんだ。」

!!

ほら!滝川くんめっちゃ嬉しそう!


「あ、そだ。そろそろ練習終わるから、いずみんと俺とともちゃんと朝倉さんとで4人一緒に帰らない?」


なに?!
え、これ完全にそうじゃん!
一緒に下校誘うとかそうとしか言いようがないよね!



急いで友恵の顔をみる。


友恵も予想外のお誘いだったらしくて、固まっていた。

「だ、ダメ?」


友恵から返事がないから不安になったようだ。


「あ、いやえと」

「ぜひお願いします!!」


緊張してどもっている友恵の代わりに私が答えた。

「了解、じゃあ正門でちょっと待ってて。すぐ行く。」


滝川くんは私たちに背を向け、和泉くんに話しかけにいった。


「……友恵、やったな」

「……やったあ」


横目で見ると、友恵の目にすこし涙が浮かんでいた。

よかったな、よかったな。

友達の幸せは私の幸せ。


私も1人、うんうん頷いて今日の友達の幸せを一緒に噛み締めていた。

それにしてもなんで私ついてきちゃったんだろ。多分私がいなかったら2人で帰ったはずだよね。気使わしちゃった。


後悔と反省を多少はした。

けど、帰りのための友恵の身だしなみチェックを手伝っていたらその反省は記憶のどこかに飛んでいた。