「ほんと、そんなんじゃないから」


「ふーん。あれを見ても言えるのかい?」


友恵はあごをくいとコートに向けた。


そこにはちょうど滝川くんの上げたトスを打った和泉くんがいた。


和泉くんの打ったボールはブロックを吹き飛ばし相手のコートに落ちた。


そして、和泉くんの嬉しそうな笑顔。


かわっ……


いや男子相手にかわいいはないか。


でもバレーをする和泉くんはほんとかっこいい。それは認める。


でも、それで気になるとかにはならんでしょ。


「うちの学校の男子バレー部さ、結構強豪なんだよ。それで2人ともレギュラーメンバー。滝川がセッターで、和泉がエース。」

「エース?!」

「そ。」



まじか、部員の数も多ししかもまだ2年なのにエースなんだ……


「どう?気になるでしょ」

友恵はどうしても私に和泉くんを気になって欲しいみたい。


「確かにかっこいいよ。けど、それだけじゃ好きにはなれないよ」

「まあ確かに。ときめきってふとした時にでるもんだしね」



追求は諦めてくれたようだ。
と、ふと自分の言葉でなにか思い出したのか、友恵は1人でくふふと笑いだした。

だらしないのない顔しやがって。

とか思いながらも友達が幸せそうにしてると私も幸せに感じる。


上手くいって欲しいなぁ。


「……ねぇ、もっと滝川くんを好きになった理由とか惚れ気とか聞かせてよ」

「えー聞きたいの?しょうがないなあ。」


友恵はそう言うけれど、めっちゃニコニコしてるから正直嬉しいんだろう。

さっきも言ったけど友達が幸せなら私も幸せなんだ。
とことん聞いてやろうじゃないの。



そうやってバレー部の練習見ながらずっと恋バナをしていた。買ったチョコレートは話している間に食べ終わってしまった。


「「「「「ありがとうございました!!」」」」」


部活終わりのこの掛け声でちょうど話すことが尽きたのか、早く滝川くんの様子が見たいのか、


「いこ!」


と友恵が話を切り上げて急いで下に降りる。

「「「お疲れ様でした!!」」」


結構駆け足で降りてきたのに親衛隊の人達の方が1歩速かったようで、滝川くんの周りを囲っていた。タオルとかお菓子とか渡してる。


「……どうする?」


と友恵の様子を伺う。

「……とりあえず荷物取りに行こか」

あからさまに落胆した声。

親衛隊なんかに負けるな!心の中で声援を送った。