「なになに〜和泉のことが気になってるの?」


私の笑った顔を見た友恵がからかう気満々といった様子で尋ねた。


しかしこっちにはこっちのカードがある。


「ふーん。そんなこと言う友恵も滝川くんが気になるんじゃないのー?」

「……」



……からかうのは強気なのに自分が言われるのは弱いのね。


顔を真っ赤にして言葉が出てこないみたい。


「……だってかっこいいんだもん」


へぇ。言うんだ。


意外だった。
それから友恵の口からは次々と滝川くんを好きな理由が滑りでた。



「高一から同じクラスなんだけど、最初は誰にでも優しくするし、チャラいと思ったんだけどさ。
なんだかんだ趣味が合うし、話してて楽しいし、気になるなーみたいに思ってたらさ」


「滝川ナイッサー!!」


友恵が声の方を見る。私もつられて見たら、そこにはさっきの爽やかな笑顔とは別の真剣で殺気さえも感じる滝川くんがいた。



「この部活の時のギャップに惚れたんだよね……。」


キュ、キュキュキュ、

あっ飛ん――


バンッ

「「「ナイッサー!!!」」」



滝川くんのサーブは相手のコートのチームにボールを触れさせなかった。


「……すごい」

「うん。すごいよ。あいつを見てると自分も頑張ろうって思える。こんなん初めてだわ。」

滝川君を愛おしそうに見つめる友恵は何だか別人みたいだった。


本気なんだ。


「私、応援する」

「ありがとう。でもあれに勝つ自信はないんだよなあ」

あれ、とは、

友恵が指さしたのはかわいい女の子の集団。

「滝川ーもう一本ナイッサー!!」

キュ、キュキュキュ

トッ

バンッ

「「「「ぎゃーーー!!!」」」」

滝川君のサーブがもう一本決まると女の子たちから黄色歓声が上がった。


「あ、あれは?」

「滝川親衛隊。」

「……すごいな」


それしか出てこなかった。いやだってほんと圧倒される勢い。

「でも、頑張るよ」


友恵の気合いの入った声をあげた。

「がんばれ」

がんばれ、友恵。

友達のこんな真剣な姿みたら応援せずにはいられない。

「で、紅は?」

「私?」

「和泉のこと気になってるんでしょ」


回避したと思っていた話題がまた戻ってきて、少し動揺する。


「え、え、そんなんじゃないよ!」

「ほほー。私らの仲じゃん白状しちまいな」

脅しか!